【ヒケ・ボイド対策】「製品の表面が凹んでいる…」設計段階で知っておきたい、肉厚と「ヒケ」のシンプルな関係

試作の3Dプリンターでは見えなかった、表面の「謎の窪み」
「完成したプラスチック製品を光にかざしてみたら、特定の場所だけがわずかに波打つように凹んでいる……」
製品開発の最終段階、あるいは量産試作のタイミングで、このような外観上のトラブルに遭遇したことはありませんか?これはプラスチック成形の代表的な不良の一つで、「ヒケ(収縮による凹み)」と呼ばれる現象です。
3Dプリンターによる試作や積層モックの段階では表面が平らだったため、本金型で成形して初めて「なぜここだけ凹むんだ?」と頭を抱えてしまう設計担当者様は非常に多いです。
しかし、このヒケは決して成形機の不具合や金型のミスではなく、プラスチックという素材が持つ「冷えて固まるときの自然な性質」が原因です。つまり、設計段階でのほんの少しの配慮で、未然に100%防ぐことができるトラブルなのです。
なぜプラスチックは「肉厚な場所」が凹んでしまうのか?
プラスチック成形(射出成形)は、熱でドロドロに溶けた樹脂を金型に流し込み、冷やして固める技術です。この「冷えて固まる」ときに、樹脂は必ずわずかに体積が小さく(収縮)なります。
• 薄い部分はすぐ固まる: 壁の薄い部分は金型に触れているため、すぐに冷えて形が固定されます。
• 厚い部分は冷えにくい: 一方で、周囲より肉厚になっている部分は、中心部がなかなか冷えません。外側が先に固まった後、遅れて中心部が冷えて縮むとき、周囲の固まった表面を内側へギュッと引っ張ってしまいます。
この「内側に引っ張られる力」によって表面がペコッと凹んでしまうのが、ヒケの正体です。特に、製品の強度を上げるために裏側に「リブ(補強の壁)」を立てたとき、そのリブの真表(おもて)側に綺麗な一本の凹み線として現れやすくなります。
デザインを諦めずにヒケを防ぐ、現場目線の「引き算ルール」
「強度を出したいから肉厚にしたい」「デザイン上、ここは平らで厚みを持たせたい」という想いもあるかと思います。そこで、形状の美しさと成形性を両立させるために、設計段階で意識していただきたい地道なテクニックが「肉盗み(にくぬすみ)」です。
1. 「均一な肉厚」を徹底する: 厚い塊を作るのではなく、裏側を大きくくり抜いて(肉盗みをして)、製品全体の壁の厚みをできるだけ「どこを切っても同じ厚さ」に揃えます。
2. リブの厚みは「本体の半分以下」に: 製品の強度を担保する裏側のリブは、本体の壁の厚みと同じにしてはいけません。目安として「本体の肉厚の50%〜60%以下」の薄さでリブを立てることで、表面への引っ張り(ヒケ)を劇的に抑えることができます。
3. どうしても肉厚にしたいなら「ボイド」を意識: 樹脂の種類や金型側の設定(保圧)を調整することで現場でも手を尽くしますが、基本は「厚い塊を作らない」ことが、一番安く、確実に綺麗な外観を手に入れる近道です。
「成形しやすい図面」は、開発のトータルコストを下げる
製品の表面にヒケが出てしまうと、それを隠すために「シボ加工(表面をザラザラにする加工)」を後から金型に追加したり、最悪の場合は図面の引き直しになって開発スケジュールが遅れてしまいます。
「デザイン性を損なわずに、どうやって肉盗みをすればいいか分からない」「このリブの厚みでヒケが出ないか不安だ」
そんなときは、ぜひ図面を確定させる前に、当社に「ここ、ヒケそう?」と気軽に声をかけてください。図面の意図をしっかり汲み取りながら、「ここをこう工夫すれば、外観を損なわずに綺麗に抜けますよ」という現場の知恵を、喜んで提案させていただきます。
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