プラスチック成形を外注・委託しようとする企業にとって、「1台の成形機でどれだけの製品が作れるのか?」という問いは、生産能力・納期・コスト計算などに直結する重要なテーマです。本コラムでは、成形機の生産キャパシティの考え方、要因、そして企業が発注時に気をつけるべきポイントを解説いたします。
1. 成形機の基本能力:サイクルタイムから割り出す
成形機1台がどれだけの数量をこなせるかは、「成形サイクルタイム」と「1ショットあたりの個数(キャビ数)」から計算されます。
計算式の一例:
生産数量(1日)=(60分 × 稼働時間) ÷ サイクルタイム × キャビ数
例えば、サイクルタイムが30秒でキャビ数が2個、1日8時間稼働する場合:
(60 × 8 × 60) ÷ 30 × 2 = 1,920個/日
2. 最大数量は“理論値”と“実稼働”で異なる
● 理論上の最大数量:
成形機を24時間稼働させ、停止ロス・金型交換なし・不良ゼロで動かした場合の数値。これは「最大数量」として参考になります。
● 実稼働ベースの生産数量:
現実には金型メンテナンス、段取り替え、品質チェック、材料補充、機械トラブルなどのロスタイムが発生します。実際の最大数量は理論値の「70〜85%」と見積もるのが一般的です。
3. サイクルタイムは製品によって大きく変わる
製品サイズ・形状・厚み・使用樹脂・冷却条件によってサイクルタイムは変動します。
- 小型精密部品(ABS樹脂など):サイクルタイム約15〜30秒
- 中型製品(ポリプロピレンなど):約30〜60秒
- 大型・肉厚製品(PC、PBTなど):60〜120秒以上
製品仕様を明確にしないと、正確な生産数量の予測は難しくなります。
4. キャビ数(同時生産個数)で大きく変わる
1ショットで何個取りできるか(キャビ数)は、金型設計によって決まります。
- 単キャビ:1ショット1個 → 高精度製品に適す
- 複数キャビ:1ショット2〜8個以上 → 小物大量生産に最適
キャビ数が多くなればなるほど、理論上の最大生産数も大きくなりますが、金型コストや品質均一性の難易度も上がります。
5. 生産数を左右する要因一覧
以下の要素によって、生産能力は大きく変動します。
| 要因 | 内容 |
| 機種・トン数 | 100t〜850tなど、成形機のサイズにより適正製品が異なる |
| 材料供給方法 | 自動供給 or 手動投入でサイクル効率が変わる |
| 成形条件 | 温度管理、射出圧力、冷却設定などの調整精度 |
| 稼働体制 | 日勤のみ or 二交代制 or 24時間体制 |
| 人的要因 | 段取り・トラブル対応のスピードやオペレーターの熟練度 |
6. 委託先に生産能力を確認する際の質問例
新規取引先に成形を依頼する前に、以下のような質問を投げると良いでしょう。
- 成形サイクルタイムはどの程度ですか?
- 最大キャビ数は何個ですか?
- 平均の不良率やロス率は?
- 月間生産能力の上限は?
- 1台あたりの最大生産数量はどのくらいですか?
7. まとめ:見積・発注時は「数量の現実性」をチェック
1台の成形機で生産できる最大数量は、成形条件・金型設計・運用体制によって大きく左右されます。理論上の数値と、現実の稼働数には乖離があるため、「必要納期に対し十分な数量を供給できるか?」を事前に見極めることが極めて重要です。
今後のポイント:自社に合った委託先選びを
単に「1台でどれだけ作れるか」だけでなく、以下の観点も検討してください。
- 短納期対応の柔軟性
- 生産変動への追従性
- 品質と歩留まりの実績
- 技術サポートの体制
これらを総合的に判断することで、より安定した生産体制を構築できます。
ご希望があれば、成形機ごとの稼働シミュレーション例や実際の生産実績から見るキャパシティ分析もお手伝いできます。お気軽にお問い合わせください。