一般的なプラスチック成形工場の月間生産数はどのくらい?業界の基準と現実のギャップ

業界の最新トレンド

プラスチック成形の新たな外注先を探す際、「この工場はどれくらいの量を対応できるのか?」という生産能力の確認は欠かせません。とくに月間生産数は、工場の実力と柔軟性を測る指標として、企業担当者にとって重要な関心事です。しかし、業界標準や工場ごとの実情を理解している方は意外と少なく、「○万個/月」などの数字だけで比較してしまうと、かえってトラブルを招きかねません。

そこで本コラムでは、一般的なプラスチック成形工場の月間生産数の目安と、その内訳、影響する要因、選定時の注意点について、経験豊富な現場の視点から丁寧に解説いたします。


1. 一般的な月間生産数の目安

プラスチック成形工場の生産数は工場の規模、設備、シフト体制、取り扱う素材や成形方法により大きく異なりますが、以下の数値は「標準的な中規模成形工場」の例としてよく挙げられます。

項目数量の目安(1ラインあたり)
1シフト(8時間)×22日稼働約10万〜30万個
2シフト制(16時間)約20万〜60万個
24時間フル稼働約30万〜80万個

この数字は製品の大きさや成形サイクル、金型のキャビ数(型取り数)によって大きく左右されます。例えば、小型・薄肉部品であれば1ショットで複数個取りが可能で、1時間に数千個の生産も可能です。一方で、大型の筐体部品や複雑形状の製品であれば、1ショット1個、かつ冷却時間が長くなるため、生産数は大幅に減少します。


2. 生産能力に影響する主な要因

(1)金型設計とキャビ数

金型のキャビ数が多いほど、1ショットで多くの製品を生産できます。一般的には4〜16キャビの金型が多いですが、量産を目的とした製品では32〜64キャビも珍しくありません。

(2)成形機の能力(トン数・型締め力)

小型部品用の50〜100tクラスから、自動車バンパーのような大型製品を扱う1000t以上の成形機まであります。トン数が上がれば対応製品のサイズも上がりますが、1サイクルにかかる時間も比例して長くなります。

(3)人員・稼働体制

1直(昼勤)のみの工場と、3直(24時間)フル稼働の工場では月間生産数に倍以上の開きが出ます。また、自動取出機やロボットによる自動化が進んでいるかどうかも、作業効率を大きく左右します。


3. 見かけの「月間〇万個」だけで判断しない理由

外注先を選ぶ際、「生産能力○万個」という表記を見かけることがありますが、注意が必要です。

  • 自社製品と同じ成形条件での数値とは限らない
  • 金型の段取り替え頻度や納期対応力は考慮されていない
  • 「理論値」ベースで実働時間を無視している場合もある

特に多品種少量生産の業種では、段取り替えの工数が生産効率に直結します。生産数が高くても、段取りに時間がかかるようでは、納期遅延のリスクが高まります。


4. 工場選定時に押さえておくべき質問

取引先候補を選定する際は、以下のような具体的な質問で生産能力の実態を把握することが推奨されます。

  • 「1ヶ月あたりの実際の稼働日数・時間は?」
  • 「同時に何型まで段取り可能か?」
  • 「金型の立ち上げから量産までのリードタイムは?」
  • 「自動化やロボット搬送は導入しているか?」
  • 「過去にどのような生産実績があるか?」

こうした会話を通じて、表面の数字に頼らない、“中身の見える”外注先選定が可能になります。


5. 月間生産数を最大化させる発注者側の工夫

発注側としても、以下の点を意識することで、外注先の生産効率向上に貢献できます。

  • 量産開始前の試作検証をしっかり行う
  • 納期に余裕を持ったスケジューリング
  • 金型のメンテナンスを発注側でも確認
  • 生産ロットのバランスを最適化する(小ロットの分散は効率悪化の原因)

まとめ:共通認識で無駄とトラブルを防ぐ

月間生産数という数字は、ただのスペック指標ではなく、「工場と発注者が共通認識を持つための会話の起点」です。キャビ数、サイクルタイム、稼働体制などの要因をすり合わせたうえで、現実的なスケジュールと数量を確認することが、持続的な取引関係の鍵となります。

一見、シンプルに見える「月間生産数」ですが、背景にある技術や運用体制を理解することで、より深い品質管理・納期管理の実現が可能になります。新たな取引先とのパートナーシップにおいて、本記事がその第一歩になれば幸いです。

PAGE TOP