~プラスチック成形の現場に生まれる信頼と最適化~
はじめに:月間生産数の「ズレ」が生むすれ違い
プラスチック成形業において、「月間生産数」という指標は非常に重要な管理要素です。しかし、取引先と成形メーカーの間でこの「月間生産数」の定義や計算方法がズレていると、納期の遅れ・コストの誤認・不信感の発生といったトラブルを引き起こす要因になります。
多くの企業では、「成形機の稼働日数×シフト数×サイクルタイム×キャビ数」といった形式で理論値を計算する一方、実際の月間生産数は金型メンテ・人手不足・段取り替え時間などの変動要素でブレやすく、机上と現場で乖離が生じやすいのが現実です。
このコラムでは、「月間生産数」の計算方法を企業と成形メーカーの間で“共通認識”として持つことで何が起こるのか、どのような効果を生むのかを、具体的な事例とともに解説します。
月間生産数の定義:まずはこの点を揃えよう
以下の観点が共通認識になることで、計画精度と信頼性が一気に向上します。
月間生産数=最大キャパか、現実的な運転値か?
- 最大理論値:設備稼働率100%、交替制・ノンストップ運転前提で計算。
- 実績ベース:過去の生産履歴から見た平均稼働率やトラブルロスを加味。
- 現実的稼働想定値:人員・段取り・予備機・保守を加味した中間値。
このいずれをベースに「月間生産数」を定義しているかが不明瞭な場合、目標設定や価格交渉にズレが生じます。
共通認識化のメリット
1. 納期ズレの予防と計画生産の実現
明確な計算基準が共有されると、「今月●個を納品予定」としたときに、必要な稼働時間・キャビ選定・サイクル設計が正確にシミュレートでき、計画生産が可能になります。
2. 適正な金型・設備投資判断ができる
共通基準で見た生産キャパシティが分かれば、「もう1型必要か」「多品種少量対応でホットランナーにすべきか」といった意思決定が合理的になります。
3. 誤解のない価格交渉につながる
原価構成の一部である「加工時間」や「段取り回数」に関する共通理解があると、見積りやロット数調整の根拠が明確になり、双方納得した交渉が行えます。
成功事例:生産数共有で変わった3社の実例
事例①:試作から量産に切り替えたA社
試作時には一日500ショットが限界だったが、成形メーカーとの計算式共有を通じて、月産12,000個への移行が現実的に。3交代制を試験導入し、導入2ヶ月で歩留まりを含めた月産対応に成功。
事例②:金型追加を回避したB社
「今の金型では月産対応不可」と言われていたB社。しかし、キャビ入替と段取り短縮策で、月間生産数の再計算を実施した結果、金型投資をせずに当初計画を達成。
事例③:発注ロットの最適化で在庫削減したC社
営業サイドが設定していた“月産”は最大理論値を前提としていたため、在庫過剰が続いていた。実際には段取り替え時間が月10時間発生しており、現実的な月産見込みは7割。これを踏まえてロットとリードタイムを見直し、在庫回転率が1.8倍に。
どうやって共通認識を形成するか?
以下の4ステップで、製品仕様・金型設計・成形条件・稼働条件を共通化していくことが有効です。
- 「稼働可能日数」「交替体制」「段取り回数」などの前提条件をすり合わせ
- 成形サイクルやキャビ数に関する実績ベースの数値共有
- 理論値と実績値のギャップを見える化(ヒートマップなどで)
- 月初レビュー・月末実績の比較とフィードバックループ構築
終わりに:月間生産数を共に語れるパートナーへ
月間生産数という単純な指標に見えて、その背景には設備稼働・人員確保・品質安定・納期遵守という多層の要素が絡んでいます。この指標を“共有言語”として扱えるようになれば、単なる「委託」から「共創パートナー」への進化が始まります。
御社の次のプラスチック成形の委託先が、こうした数字の共有を大切にする企業であることを、ぜひ確認してみてください。