~プラスチック成形企業の生産性向上戦略~
プラスチック成形業界において「月間生産数(Monthly Output)」は、営業戦略、収益性、工場の稼働率、そして取引先からの信頼性に直結する極めて重要な指標です。生産数の向上は単なる数量の問題ではなく、企業の成長戦略に深く関わるテーマです。
今回は、実際の現場から得られたノウハウをもとに「月間生産数を増やすための基本的な10の方法」を分かりやすく解説いたします。
① 成形サイクルタイムの短縮
最も基本的かつ効果的な方法が、1ショットあたりのサイクルタイム(Cycle Time)短縮です。冷却時間や型開閉スピード、取り出し工程などを見直すことで、全体の生産効率が向上します。例として、冷却効率を上げる金型設計や、射出条件の最適化があります。
② 自動化・ロボット導入による工数削減
取り出し機、搬送ロボット、製品検査AIなどを導入し、人手の介在を減らすことで連続稼働時間を延ばすことができます。夜間・休日も自動で稼働できる体制が整えば、同じ設備であっても生産量は大きく変わります。
③ 金型の多点キャビ設計(マルチキャビ)
1ショットで成形できる個数を増やす「マルチキャビ化」は即効性が高い方法です。単キャビ(1個取り)から2個取り、4個取りへと設計変更することで、月間生産数は倍増~数倍になります。ただし、射出圧力バランスや流動解析が重要です。
④ 材料供給・乾燥工程の効率化
樹脂ペレットの供給ロス・乾燥ロスをなくすためには、事前の乾燥時間短縮、材料切り替え時間の最適化が重要です。成形機ごとに個別乾燥機を設置することも効果的です。
⑤ スケジューリングと段取り替えの最適化
短納期化・多品種少量生産が進む今、「段取り替え」による生産ロスは避けられません。品番切り替えごとの時間を最小化するために、事前準備の標準化、金型交換の並列作業化などが重要です。
⑥ 金型メンテナンスと設備稼働率の維持
生産中のトラブルによるダウンタイム削減も極めて重要です。定期的な金型洗浄、消耗品の事前交換により「突発停止」を避け、安定生産を維持することが生産数拡大につながります。
⑦ スクラップ率の低減と不良品対策
不良品の発生はそのまま生産ロスにつながります。不良の要因分析(ヒートマップなど)を行い、金型、成形条件、材料ロットなどの要因を定量的に管理することが重要です。
⑧ 三交代制など勤務体制の見直し
人的リソースに余裕がある場合は、生産シフトを見直すことで稼働時間の拡張が可能です。例えば、2直から3直への移行や、夜間帯のみロボット運用にするハイブリッド体制の導入が挙げられます。
⑨ 可視化とIoT導入による稼働率のモニタリング
設備にセンサーやカメラを設置し、リアルタイムで稼働率・停止原因を見える化することで、改善サイクルを早めることができます。多くの中小工場が無料~低コストで導入できるクラウド型ダッシュボードも登場しています。
⑩ 計画生産と在庫調整のバランスを取る
短納期対応ばかりを優先して計画的な生産ができない状態は、効率を大きく下げます。あらかじめ需要予測を立て、一定の生産スロットを確保することで、ラインの停止を防ぐことができます。
【まとめ】月間生産数アップは企業体質の改善から
生産数を上げるための施策は、決して設備の刷新やコストのかかる改革ばかりではありません。「見える化」「標準化」「自動化」を段階的に取り入れることで、今の設備でも大きな改善が可能です。
また、外注先・OEM先との連携も重要です。無理な数量要求ではなく、「技術的・人的キャパを理解した発注設計」が、双方にとって最も効率的な生産計画へとつながります。
このコラムが、貴社の生産戦略やパートナー選定の一助となれば幸いです。