~取引先選定で失敗しないための視点~
プラスチック成形業界では、製品開発コストや納期、品質の観点から「海外生産」と「国内生産」の選択は非常に重要な経営判断です。特に近年では、環境対応素材の活用、急激な為替変動、地政学的リスクなども判断材料として加わり、取引先選定の難易度は増しています。
このコラムでは、海外と国内でのプラスチック成形の主な違いを明確に比較し、実際に新たな成形先を検討している企業様が、自社にとって最適な選択ができるような判断軸を提示します。
1. コスト:一見安く見えるが「本当の原価」は?
海外生産
- 中国や東南アジアでは人件費が安く、成形コストが1/2〜1/3程度になることも。
- しかし、輸送費・関税・現地管理コストを加えると、想定より高くなるケースが多発。
- 為替レートの影響を強く受ける。
国内生産
- 初期コストは高めに見えるが、リードタイム短縮や不良対応の迅速性で総合的に有利。
- 試作から量産、再設計までのフローを一貫対応できることが多く、意思疎通もスムーズ。
■ POINT:コストだけでなく、「手戻り」「品質管理コスト」「リスクコスト」も含めたTCO(Total Cost of Ownership)での判断が必須。
2. 品質と技術力:精密成形は国内が圧倒的に有利
- 日本の成形工場は、ミクロン単位の精度が求められる医療機器・車載部品などの対応実績が豊富。
- 海外では、設備や管理体制によって品質のばらつきが大きく、管理指導が必要。
- JISやISO等、日本特有の品質基準や図面指示に対して正確な理解がされないことも多い。
■ 高精度・高信頼性が求められる製品は、国内産が基本です。
3. リードタイムと納期の確実性
海外生産
- 納期が1.5~2倍以上かかるケースも。加えて、船便・税関トラブルによる遅延リスク。
- COVID-19やロックダウン、港湾ストライキなど不測の事態に極めて弱い。
国内生産
- 発注~納品まで短納期に柔軟対応が可能。設計変更などへのスピード対応も魅力。
- 生産状況の見える化や現場立会いも容易で、社内稟議も通しやすい。
4. 知財とセキュリティ:守りたい設計情報があるなら
- 海外では図面や仕様漏洩のリスクが常につきまとう。設計流用・模倣リスクもゼロではない。
- 国内企業ではNDA管理や履歴管理の制度が整っており、情報漏洩対策も進んでいる。
- 特に新製品や特許技術を含む成形には、国内工場との連携が安心。
5. コミュニケーションと文化ギャップ
- 海外とのやりとりは、言語・文化・時差の壁が存在。日本特有の表現や細かな意図が伝わりにくい。
- 設計意図を現場まで落とし込むのが難しく、メールのやり取りだけで工場を動かすのは危険。
- 国内であれば、電話1本・訪問1回で済む話も多い。
6. サステナビリティ・SDGsの視点からも国内優位
- 国内では、再生材やバイオマス樹脂への対応、CO2排出管理体制の整備が進んでいる。
- ESG対応や環境報告書の要件を満たすには、環境配慮型の国内工場と組む方が実現性が高い。
7. 結論:こういう企業様には「国内生産」が向いています
こんな課題をお持ちなら… | おすすめ |
品質トラブルで損失経験がある | ☑ 国内 |
設計変更が頻繁、スピードが欲しい | ☑ 国内 |
精密成形、医療・自動車など信頼性重視 | ☑ 国内 |
サステナブル素材を使いたい | ☑ 国内 |
初期コストは抑えたいが量産は慎重に進めたい | ☑ 国内小ロット+後工程海外でも◎ |
まとめ:安かろう悪かろうの時代は終わり。共創型の国内成形パートナーと組む時代へ
安さだけを理由に海外生産を選んだ結果、品質不良・納期遅延・対応不能などの課題に直面した企業は少なくありません。一方、“コスト以上の安心感”を提供できる国内の成形パートナーを活用することで、製品開発のPDCAを加速し、サステナブルかつ競争力のある製品展開が可能になります。
これからの成形パートナー選定は、「価格」ではなく「成果と安心」を軸に選ぶべき時代。御社の製品に適した最良のパートナー選定に、ぜひ本記事をご活用ください。