海外のプラスチック材料を使用する際の注意点は?

成型基礎知識

はじめに:グローバルな調達時代における課題

近年、製造コストの削減や安定供給を目的に、海外からのプラスチック材料調達を検討する企業が増加しています。特に中国、韓国、東南アジア、欧州からの調達が活発ですが、実際に導入する際には国内材料とは異なる多くのリスクや注意点が潜んでいます。

ここでは、海外のプラスチック材料を使って成形品を製造する際に気をつけるべき「品質」「規格」「取引リスク」「物流」「環境対応」の5つの観点で詳しく解説します。


1. 品質のバラつきとロット管理

海外製の樹脂材料は、安価で大量に仕入れられる反面、品質のばらつきが大きいことがよくあります。特に注意が必要なのは以下の点です:

  • ロットごとの物性変動:例えば、同じ型番のポリカーボネートであっても、ロットが異なるとMFI(溶融流動率)や強度に差が出ることがあります。
  • 混入物や不純物:再生材や安価な充填材が混入されているケースもあり、成形品にクラックや変色などの不良が発生するリスクが高まります。
  • 事前試作の重要性:輸入前に可能な限り試験成形を行い、物性や外観、収縮率などを事前に確認しておくべきです。

2. 材料規格と法令適合性の違い

海外では、日本国内と異なる規格や環境法制が適用されており、RoHS指令REACH規則などへの適合確認が必要です。日本で使用される場合、以下を確認しておきましょう:

  • MSDS(安全データシート)の内容が日本語で提供されているか。
  • 食品衛生法医療機器認証に対応できるグレードかどうか。
  • 輸入時に厚生労働省や経済産業省の許可が必要となるケースもあります。

ポイント:「価格が安い=使える」ではありません。国内販売を前提とする場合、必ず適法性のチェックが必要です。


3. 信頼できる仕入れ先かの見極め

海外のサプライヤーとの取引は、情報の非対称性言語・文化の壁が大きな障害になります。

トラブル事例:

  • 仕様と異なる材料が届く
  • サンプルは良品だが量産品が粗悪品
  • 為替変動や関税リスクで価格が突然変更

対策:

  • ISO9001取得の工場かどうかを確認
  • 第三者の監査・検査代行会社を利用
  • 信頼できる輸入商社技術仲介会社を介することでトラブルを未然に防げます

4. 輸送と保管時の品質劣化に注意

海上輸送や長距離輸送では、湿度や温度変化によって吸湿酸化劣化が起こるリスクもあります。特に以下の素材には注意が必要です:

  • ナイロン(PA):吸湿による物性変化
  • PBT:紫外線での変色・酸化
  • PLA(バイオプラスチック):高温下での劣化

保管上の注意:

  • 輸送時は乾燥剤入りの密閉パックに入れてもらう
  • 到着後すぐに乾燥機で事前処理
  • 使用前の再検査(MFI測定など)をルーチン化する

5. 環境・サステナビリティの視点

欧州ではサステナブル材料が増えてきており、企業としてもESG対応カーボンニュートラル戦略の観点で輸入材料を活用したいというニーズもあります。

ただし、以下の点も要確認です:

  • バイオマス含有率や再生材料比率の証明書があるか
  • カーボンフットプリント(CFP)に対応しているか
  • 日本の補助金や環境認証制度に適合するか

まとめ:海外材料導入時のチェックリスト

チェック項目内容
品質ロット安定性・不純物の有無・試作済みか
規格RoHS/REACH・日本法適合・MSDS確認
信頼性ISO取得・過去取引実績・商社経由か
輸送管理乾燥処理・紫外線対策・再検査体制
環境対応環境認証・CFP・補助金対応可否

最後に

海外のプラスチック材料を使うことでコスト削減や新たな機能性素材の導入が実現する一方で、多くの注意点が存在します。製品の安定供給・品質維持・顧客満足を目指す上で、信頼できるパートナーとの協業が成功のカギです。

当社では、豊富な輸入樹脂の取り扱い経験と技術支援体制をもとに、海外材料導入から成形立上げまで一貫対応いたします。もしお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

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