~コストと環境対策を同時に進めるスマート成形のススメ~
はじめに:成形現場に求められる「省エネ化」
近年、プラスチック成形業界におけるエネルギーコストの高騰は企業に大きな圧力をかけています。同時に、SDGsやカーボンニュートラルへの対応が求められる中、環境配慮型の製造体制へのシフトも急務となっています。
このような背景から、「成形品のエネルギー消費をいかに削減するか」は、技術者だけでなく経営層にとっても無視できない課題です。
本記事では、具体的な成形現場の省エネ施策と、実現のための考え方や設備投資のポイントを解説します。
成形品のエネルギー消費を生む要因とは?
プラスチック成形におけるエネルギー消費は主に以下の工程で発生します:
- 加熱(材料溶融)
- 射出・成形動作(型締・型開)
- 冷却工程(冷却水やチラー)
- 補機動作(乾燥機、搬送、除湿など)
特に1と2の電力消費量が全体の70〜80%を占めると言われており、ここが削減の主戦場となります。
エネルギー削減のための5つの具体的施策
① 電動射出成形機の導入(油圧式→電動式)
電動成形機は、必要な部分のみをモーターで駆動するため待機中のエネルギー消費が大幅に削減されます。実際、電動化により30〜50%の消費電力削減を達成した事例も多く報告されています。
② 成形条件の最適化(温度・圧力・速度の見直し)
材料の物性に対して適切でない温度設定や過剰な射出圧力は、無駄なエネルギーを生む要因です。KPIを取りつつ工程分析することで、最小限のエネルギーで最大の成形効率を達成できます。
③ 金型冷却の改善(冷却効率の向上)
古い金型は、冷却配管の詰まりや配置不良により冷却時間が長くなり、エネルギーとサイクル時間のロスを生みます。金型メンテナンスや流路再設計は、冷却効率20%アップ、サイクル時間10%短縮などの効果も。
④ 再生可能エネルギーの利用(太陽光+蓄電池)
成形工場の屋根に太陽光パネルを設置することで、昼間のベース負荷を自家発電でまかなうことが可能になります。補助金の活用で初期投資を抑えながら、10年スパンで大きなコストメリットを狙えます。
⑤ 廃熱の回収・再利用
冷却水や機器の排熱を熱交換器で回収して、乾燥機などへ再利用するシステムも導入が進んでいます。特に24時間稼働の現場では電気・ガス使用量の15%削減も期待できます。
省エネ成形の効果事例:具体的な成果とは?
ある中規模成形工場(稼働台数15台)で以下の施策を導入したところ:
- 電動機導入率:60%へ移行
- 成形条件最適化による温度・圧力調整
- 成形サイクル短縮:平均9秒→7.5秒(約17%短縮)
- 電気使用量:前年比▲32%削減
- 年間電気代:480万円 → 330万円(約150万円削減)
省エネは、単なるコストダウンではなく、製品の品質安定やトラブル防止にもつながります。
まとめ:エネルギー削減=企業価値の向上
エネルギー削減の取り組みは、環境対応・コスト削減・品質向上の三拍子がそろった経営戦略です。
「古い設備でも工夫次第で削減可能」
「まずは1台から、テスト導入して成果を見たい」
「補助金を活用して省エネ化したい」
そんな企業様に向けて、当社では成形工程の現状分析から省エネ対策の設計、実行支援までワンストップでご提案いたします。