プラスチック成形品のリサイクル方法

業界の最新トレンド

~持続可能な製造業への一歩として知っておきたい最新手法~


はじめに:成形品リサイクルの重要性が急上昇中

世界的なSDGs(持続可能な開発目標)の流れを受け、製造業にも環境配慮の姿勢が強く求められるようになっています。特にプラスチック製品については、リサイクル対応の有無が新規取引先選定の基準になるケースも増えています。

「環境対応していない会社とは、取引を控える」
そんな声が聞こえてくる中、プラスチック成形品のリサイクル方法について正しく理解し、実践することが今後の製造業の生き残りに不可欠です。

本コラムでは、押さえておくべきリサイクル技術・流れ・注意点を、実務目線で丁寧に解説していきます。


リサイクルには「物理的」と「化学的」がある

まず押さえておきたいのが、プラスチックリサイクルには主に以下の2種類があるということです。

1. 物理的リサイクル(マテリアルリサイクル)

使用済み成形品を粉砕・洗浄し、再び原料(ペレット)として再利用する方法です。たとえば「PP」「PE」「PET」など、分別・品質管理がしやすい樹脂に多く使われます。

  • 特徴:コストが安く、再資源化が比較的容易
  • 注意点:混合樹脂や異物混入があると品質が下がるため、回収・分別が鍵

2. 化学的リサイクル(ケミカルリサイクル)

熱分解やガス化により、プラスチックを原料のモノマーやガスへと分解し、再合成する方法です。複雑な材料構成や着色プラなどにも対応可能。

  • 特徴:技術が進化しており、カーボンニュートラルに直結する技術として注目
  • 注意点:専用設備が必要であり、コストは物理的より高め

実務でよく用いられる5つの成形品リサイクル手順

では、実際に企業でどのようにリサイクルが行われているのでしょうか。以下に工程ベースで整理しました。

Step1:回収体制の構築

まず重要なのは、廃プラを工程内で分別・保管する仕組みづくりです。成形現場ではランナーや不良品が出るため、それらを定期的に集めて仕分けします。

  • 推奨:色別・材料別のボックス設置
  • ポイント:バーコードやIoTセンサーを活用すればトレーサビリティも確保可能

Step2:粉砕

専用の粉砕機(グラニュレーター)を使用して、使用済みプラを一定サイズに砕きます。この段階で金属などの異物は磁選機などで除去することが大切です。

Step3:洗浄・乾燥

油分や異物が付着している場合は、水またはアルカリ洗浄→乾燥を行います。汚れが残ったままだと、リペレット後の物性に大きな影響が出ます。

Step4:再ペレット化(リペレット)

粉砕したプラを加熱・押出してペレット化し、再原料として整形品に戻せる状態にします。これを「再生材」と呼びます。

  • 技術の進化:押出温度・冷却速度などの制御で、ほぼバージン材と同等の性質も可能

Step5:再成形と品質確認

再ペレットは通常、バージン材と混合(30~70%)して再成形します。その際、強度・色調・寸法安定性などを社内基準で評価。


実際の導入企業例:リサイクル率80%以上の中小成形企業

新潟県内のある中小企業では、自社内で廃プラ粉砕からリペレットまで対応する設備を導入し、月間30トンのリサイクルを実現。以下のようなメリットが得られています。

  • 材料コスト:約15%削減
  • 環境対応型企業として大手メーカーからの新規受注獲得
  • ISO14001やESGレポートの評価向上

成形方法別のリサイクル適正

成形法リサイクル適正コメント
射出成形ランナー回収しやすく、再成形性高い
押出成形シート材やパイプなど連続成形品で再利用性あり
ブロー成形容器系で形状が複雑なため、粉砕再利用に注意
真空成形薄板成形で歩留まり少なく、収集コスト高

今後の展望:AI×IoT×リサイクルで次世代工場へ

製造DXの文脈では、AIを活用したリサイクル率の自動モニタリングや、IoTセンサーによる分別支援などが進んでいます。
また、自治体や大手素材メーカーとの水平リサイクル(同等品質で再使用)への取り組みも進行中です。


まとめ:新たな取引先開拓にも直結するテーマ

プラスチック成形業において、リサイクル対応は「CSR」や「コスト削減」だけでなく、新規取引先獲得やブランド価値の向上にも直結する重要テーマです。

自社内対応から外部連携まで幅広い手段がありますので、まずは**「何をどうリサイクルするのか?」**のルール化から始めてみてはいかがでしょうか。


ご希望があれば、貴社の成形工程に合ったリサイクル方法のアドバイスや、パートナー企業のご紹介も承ります。
ぜひお気軽にご相談ください。

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