プラスチック成形業界におけるSDGsの取り組みとは?

業界の最新トレンド

― 環境問題と製造業の未来を見据えた持続可能なモノづくり

はじめに

近年、環境問題への意識の高まりとともに、製造業にもSDGs(持続可能な開発目標)への貢献が強く求められるようになっています。特に、資源の大量消費・廃棄物の排出が課題とされてきたプラスチック成形業界は、サステナブルな技術や材料への転換が急務です。

本記事では、SDGsに対するプラスチック成形業界の主な取り組みと、成形企業・金型メーカーが果たすべき役割について解説します。


そもそもSDGsとは?

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年に国連で採択された2030年までに達成すべき17のグローバル目標のことです。環境・経済・社会のバランスの取れた発展を目指すこの指針は、今や企業活動の指標にもなっています。

プラスチック成形業界に関連するSDGs目標の例は以下の通りです:

  • 目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 目標12:つくる責任 つかう責任
  • 目標13:気候変動に具体的な対策を
  • 目標14:海の豊かさを守ろう

プラスチック成形業界が直面する課題

廃プラスチック問題

海洋ごみの約8割はプラスチックであり、その大半は製造・流通の過程で排出されたもの。マイクロプラスチック化による生態系への影響も深刻です。

二酸化炭素排出量

成形工程には高温加熱・高圧射出・冷却など、膨大なエネルギーが必要です。金型製造や樹脂加熱の工程で排出されるCO₂は環境負荷が大きく、温暖化対策の観点からも改善が求められています。

リサイクル性の低さ

混合素材や添加剤入りプラスチックのリサイクルは困難で、廃棄コストと資源ロスが課題となっています。


■SDGsに向けた主な取り組み【材料編】

1. バイオマスプラスチックの導入

トウモロコシ・サトウキビなどの植物由来素材を原料とするバイオプラスチックは、CO₂排出量の抑制と化石資源依存の軽減に貢献します。
一例として、PLA(ポリ乳酸)は生分解性も高く、環境配慮型の食品容器や農業用部材に使用されています。

2. 再生プラスチックの活用

回収された使用済みプラスチックを再加工して製品に再利用する「リサイクル材」の活用も拡大。特に、リグラインド材(粉砕再利用材)を成形材料に活用することで、廃棄物の大幅削減が可能になります。


■SDGsに向けた主な取り組み【成形技術・工程編】

1. 省エネ型成形機の導入

油圧式から電動射出成形機への切り替えにより、エネルギー消費量を最大70%削減可能。インバータ制御・ヒーター効率化・冷却時間短縮などの省エネ対応も進んでいます。

2. 金型冷却の効率化

最新の3Dプリント金型(金属積層造形)やコンフォーマル冷却を取り入れることで、冷却効率が大幅に向上し、成形サイクル短縮と省エネを実現します。

3. スクラップレス生産の推進

ゲート方式の見直しやランナー再利用、インサート成形技術により廃棄物ゼロに近づける工法が進化中。2色成形やインモールド成形などの一体化技術も省資源化に貢献します。


金型製作におけるSDGs貢献の視点

金型メーカーもまた、SDGs実現に重要な役割を担っています。

高耐久金型の設計

繰り返し使用できる耐久性の高い金型設計により、メンテナンス頻度や廃棄を削減し、トータルでの資源消費を抑制。

リサイクル性を考慮した形状設計

成形品を分解・分別しやすくする設計(デザイン・フォー・リサイクル)を行い、将来的な廃棄・再利用にも対応。

工程最適化によるカーボンフットプリント削減

加工工程のデジタル化・シミュレーション(CAE活用)により、無駄な試作・加工の削減が可能に。


地域や人材への貢献もSDGsの一部

SDGsは環境だけでなく、労働・教育・地域社会との共生も重要テーマです。

  • 女性技能者や外国人技能実習生の育成・定着支援
  • 地域中小企業との共創型ネットワークによる雇用創出
  • 若年層への技能継承・工場見学の受け入れ等、次世代教育支援

これらは目標4(教育)・目標8(働きがいと経済成長)・目標11(住み続けられるまちづくり)に直結します。


まとめ:SDGsは「経営戦略」の一部へ

プラスチック成形業界にとってSDGs対応は「負担」ではなく「進化のチャンス」です。

  • 脱炭素化・省エネ技術の導入
  • バイオ・リサイクル材料の活用
  • 高効率な金型・成形機設計
  • 地域社会・人材との連携

これらは結果としてコスト削減・品質向上・ブランド価値向上に直結し、「選ばれる企業」となるための土台になります。

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