― プラスチック成形技術の進化が生み出す高機能・高付加価値製品の世界
■はじめに
近年、製品の高機能化やデザイン性の向上に伴い、プラスチック成形技術も著しく進化しています。中でも注目されているのが「2色成形(ツーショット成形)」です。
この技術は、異なる2種類の材料(または2色の樹脂)を一体化して成形する工法で、家電・自動車・医療・日用品など多くの分野で採用が進んでいます。
本記事では、2色成形の基本原理からメリット・デメリット、活用事例、導入時の注意点までを、現場経験豊富なカスタマー視点でわかりやすく解説します。
■2色成形(ツーショット成形)とは?
2色成形とは、1つの金型内で2種類の異なる樹脂を用いて連続して成形を行う技術です。
一般的には、1回目に「ベース」となる材料を射出成形し、その直後に金型が回転またはスライドして位置を変え、2回目に別の材料が射出される構造となっています。
このような一体成形のプロセスを通じて、組立工程を省きながら、接着剤なしでも高い接合強度と美観を実現することができます。
■なぜ「2色成形」が注目されているのか?
従来、異なる素材を組み合わせるには、個別に部品を成形してから組立・接着・圧着などの工程が必要でした。しかし、2色成形では以下のような製造上のメリットが得られます。
● 作業工程の短縮
別工程での組立が不要なため、人件費削減・生産効率アップが可能です。
● 品質の安定化
成形機内で一体化されるため、ズレやバラツキが発生しにくく、品質が安定します。
● 製品の高付加価値化
異素材によるグリップ性・防水性・意匠性の向上が可能。ユーザー満足度が高まります。
■主な使用例・活用分野
2色成形は幅広い業界で活用されています。特に以下の分野では顕著です。
業界 | 主な製品例 |
自動車 | ダッシュボード、ノブ、ボタン類(ソフト感や意匠を付加) |
家電 | リモコン、操作パネル(透明樹脂+文字印刷層) |
医療・介護 | グリップ付注射器、電動歯ブラシグリップ |
日用品 | キッチンツール、化粧品容器(滑り止め機能) |
玩具・文具 | カラフルなパーツ一体品、握りやすさ向上 |
■2色成形に使われる代表的な樹脂の組み合わせ
ツーショット成形では、異なる性質をもつ2種類の材料を組み合わせることが可能ですが、すべての組み合わせが可能なわけではありません。以下に代表的な組み合わせを示します。
- PC(ポリカーボネート)×ABS:外装+耐衝撃部品に
- PP(ポリプロピレン)×TPE(熱可塑性エラストマー):柔らかいグリップに
- PMMA(アクリル)×PC:光透過性+耐熱性を実現
- ナイロン×TPE:工具や自動車部品の握りやすさ向上
■2色成形の工程フロー(イメージ)
- 1stショット(ベース成形)
金型の第1キャビティにベース樹脂を射出成形 - 金型回転またはスライド
金型が自動的に動いて、第2のキャビティへ移動 - 2ndショット(追加成形)
2種類目の樹脂を射出して、一体化成形 - 冷却・取り出し
冷却後、製品を取り出す
※射出成形機は通常、ツーショット対応の専用機を使用。金型も2材対応の特殊構造が必要です。
■2色成形の注意点・課題
1. 初期コストが高い
金型は2色対応の専用設計が必要で、初期投資が高くなります。また、成形機も専用機が必要な場合があります。
2. 材料の相性が重要
異種材料間の接着性・収縮率の違い・剥離リスクに注意が必要です。適切な組み合わせを選ばないと、製品不良や耐久性低下の原因になります。
3. 設計自由度に制約
一体成形のため、抜き勾配・流動性・冷却効率などの条件を考慮した設計が求められます。
■2色成形の今後の展望
近年では、3色成形(トリショット)や金属と樹脂のインサート成形との複合技術も開発されており、より複雑で高性能な製品開発が進んでいます。
また、エコ素材やバイオプラスチックとの2色成形も今後の注目分野。サステナビリティ対応や機能性の両立が可能になり、製造業の新たな武器となっています。
■まとめ:2色成形は高付加価値製品づくりのカギ
2色成形は、コスト削減・品質向上・意匠性アップを実現する現代のモノづくりに欠かせない技術です。
初期投資こそ必要ですが、それ以上の製品競争力・ブランド力の向上を狙えるのが大きな魅力。
これから2色成形の導入を検討されている企業様は、信頼できる金型メーカーや成形会社と連携し、材料選定・設計段階からの技術相談を行うことが成功のカギとなるでしょう。