〜銀色の筋を消し去るために知っておくべき原因と対処法〜
プラスチック射出成形において、「シルバーストリーク(Silver Streak)」は多くの現場で頭を悩ませる成形不良の一つです。製品表面に銀色や白っぽい筋のような模様が発生する現象で、外観を重視する製品では致命的な欠陥とされることもあります。
今回はこの「シルバーストリーク」の発生原因から、その具体的な対策方法までを、現場経験30年の熟練職人の視点からわかりやすく解説いたします。
■ シルバーストリークとは?
シルバーストリークとは、成形品の表面に現れる銀色や白色のスジ状の模様のことを指します。日本語では「銀条」や「銀筋」とも呼ばれ、特に透明材料や光沢のある樹脂で目立ちやすい不良です。
この現象は、外観品質を大きく損ねるため、製品クレームや再成形の原因になることが多く、品質コストの増加や納期遅延を引き起こす要因となります。
■ シルバーストリークの主な原因
シルバーストリークの主な原因は、大きく以下の4つに分けられます:
1. 材料中の水分(乾燥不足)
もっとも多い原因は、材料中の水分が成形時の高温で気化し、それが樹脂中に混ざり筋状に現れることです。特に吸湿性の高い樹脂(ナイロン、PC、PETなど)は注意が必要です。
2. 空気の巻き込み(エアトラップ)
金型内に空気が逃げきれずに樹脂に巻き込まれた場合も、気泡が裂けてシルバーストリークが発生します。特に複雑な形状や薄肉の製品で起こりやすい現象です。
3. 成形条件の不適正
射出速度が速すぎる、または温度設定が高すぎるなどの条件ミスにより、材料の揮発成分や空気が激しく動き、ストリークの原因になります。
4. 材料劣化・再生材の使用
再生材(リグラインド材)や古くなった材料を使用した場合、成分劣化や揮発性成分の変化によってシルバーストリークが起こりやすくなります。
■ シルバーストリークの具体的な対策方法
【対策1】材料の適切な乾燥
- 樹脂ごとの推奨乾燥温度・時間を守る(例:PC → 120℃×4時間)。
- 吸湿性のある材料には除湿乾燥機を使う。
- 乾燥中に空気中の湿度管理を行い、乾燥機のメンテナンスも定期的に。
【対策2】ガス抜き設計・ベントラインの強化
- 金型に適切なガス抜き構造(ベント)を設ける。
- エアトラップが発生しやすい位置には排気溝やピンベントを追加する。
- 製品形状に応じてゲート位置やフロー方向の見直しを行う。
【対策3】成形条件の最適化
- 射出速度をゆっくりめに調整して空気巻き込みを軽減。
- 成形温度が高すぎる場合は、樹脂の揮発成分が飛びやすくなるため、適正温度に設定。
- 保圧時間・冷却時間のバランスを見直す。
【対策4】材料の選定と管理
- 使用する材料の保存状態を見直し、吸湿を避ける保管方法を徹底。
- 再生材を使用する際は混合比率を調整し、できればバージン材を使用。
- 輸送時に吸湿した材料も、成形前に必ず再乾燥することが重要。
【対策5】金型メンテナンスの徹底
- 金型のガス抜き溝やベントラインに異物が詰まっていないかを定期的に点検。
- 金型表面に焦げやガス跡があれば、早急に清掃。
- 金型温度が不安定だと冷却バランスが崩れ、ストリークが発生することも。
■ シルバーストリークが起きやすい材料と注意点
材料名 | 備考 |
ナイロン(PA) | 吸湿性が非常に高く、乾燥不足で発生しやすい |
ポリカーボネート(PC) | 熱分解しやすく、再生材使用時は特に注意 |
ポリエステル系(PBT, PET) | 吸湿・ガス発生のリスクあり |
ABS樹脂 | 成形条件によって気泡や揮発成分が出やすい |
■ 成形トライ時のチェックポイント
- 成形品に銀スジが出たタイミングや位置を記録。
- 成形条件を段階的に変更して、どの要素が影響しているか検証。
- 金型の通気性やガス溜まりの状態を目視やガスチェックペンなどで確認。
【まとめ】
シルバーストリークの発生は、材料の乾燥不足・エアトラップ・成形条件のミス・金型の不備など、複数の要因が重なって起こります。特に、目に見える外観不良であるため、最終製品としての価値を大きく損ねる問題です。
そのため、設計段階から成形・金型・材料管理に至るまで、総合的な対策が不可欠です。
「なぜここに銀スジが出るのか?」を突き詰める姿勢こそが、高品質な成形品づくりの第一歩です。
成形現場でシルバーストリークにお困りの方は、当社の現場支援やトライ立会をご活用ください。長年の経験とノウハウで、貴社の課題を一緒に解決いたします。