プラスチック成形は、使用する樹脂の種類によって製品の特性が大きく変わります。適切な素材を選定することで、耐久性、柔軟性、耐熱性、耐薬品性など、目的に応じた性能を発揮できます。本記事では、プラスチック成形で対応可能な主要な樹脂の種類とその特性について詳しく解説します。
1. 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い
プラスチック成形に用いられる樹脂は、大きく熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の2種類に分けられます。
熱可塑性樹脂(Thermoplastics)
加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まる性質を持つ樹脂。再加熱すれば再び柔らかくなるため、リサイクルが容易です。射出成形、押出成形、ブロー成形などの成形方法に適しています。
熱硬化性樹脂(Thermosetting Plastics)
加熱することで硬化し、その後は再加熱しても形状が変わらない樹脂。高温・高圧に強く、耐熱性や剛性に優れています。主に圧縮成形やトランスファー成形に使用されます。
2. 対応可能な主要な樹脂と特性
① 汎用プラスチック(一般的な用途向け)
素材名 | 特性 | 用途例 |
PE(ポリエチレン) | 軽量、耐薬品性、高い柔軟性 | 容器、パイプ、フィルム |
PP(ポリプロピレン) | 耐熱性、剛性、耐薬品性 | 自動車部品、食品容器、家電カバー |
PS(ポリスチレン) | 透明性、加工性、軽量 | 食品包装、電気部品、ディスプレイケース |
PVC(ポリ塩化ビニル) | 耐水性、難燃性、耐久性 | パイプ、窓枠、電線カバー |
② エンジニアリングプラスチック(高機能用途向け)
素材名 | 特性 | 用途例 |
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン) | 耐衝撃性、耐熱性、剛性 | 自動車部品、家電製品、玩具 |
PC(ポリカーボネート) | 高い耐衝撃性、透明性、耐熱性 | レンズ、光学機器、安全ヘルメット |
POM(ポリアセタール) | 高強度、低摩擦、高い寸法安定性 | 歯車、ベアリング、機械部品 |
PA(ナイロン) | 高強度、耐摩耗性、耐薬品性 | 繊維、ギア、機械部品 |
③ 高機能プラスチック(特殊な用途向け)
素材名 | 特性 | 用途例 |
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン) | 高耐熱性、高強度、耐薬品性 | 航空宇宙、自動車、医療機器 |
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン/テフロン) | 非粘着性、耐熱性、耐薬品性 | フライパン、医療用チューブ、シール材 |
LCP(液晶ポリマー) | 高耐熱性、高剛性、耐薬品性 | コネクター、電子部品、高周波回路基板 |
④ バイオプラスチック(環境対応素材)
素材名 | 特性 | 用途例 |
PLA(ポリ乳酸) | 生分解性、高透明性 | 食品容器、フィルム、3Dプリンティング |
PHA(ポリヒドロキシアルカノエート) | 生分解性、耐水性 | 包装材、医療用途 |
3. 成形方法ごとの適した素材
成形方法 | 適した素材 |
射出成形 | ABS、PC、PP、PE、PA、POM |
押出成形 | PE、PP、PVC、PS |
ブロー成形 | PE、PP、PET |
圧縮成形 | フェノール樹脂、エポキシ樹脂、PEEK |
3Dプリンティング | PLA、ABS、PETG、ナイロン |
4. 素材選定のポイント
素材を選定する際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
- 耐久性と強度 – 長期間の使用に耐えられるか。
- 耐熱性 – 高温環境での使用が可能か。
- 耐薬品性 – 特定の化学物質に対して耐性があるか。
- 加工性 – 目的の形状に加工しやすいか。
- コスト – 予算に見合った素材であるか。
- 環境負荷 – リサイクルや生分解性の有無。
5. まとめ
プラスチック成形では、用途や目的に応じて最適な素材を選定することが重要です。汎用プラスチックからエンジニアリングプラスチック、高機能プラスチック、バイオプラスチックまで幅広い種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
適切な素材選定を行うことで、製品の品質向上、コスト削減、環境負荷の低減を実現できます。製品開発においてどのような樹脂を選べばよいか迷った際は、専門家の意見を参考にしながら最適な材料を選びましょう。
プラスチック成形に関するご相談や、最適な素材の選定について詳しく知りたい場合は、お気軽にお問い合わせください。