リサイクル可能なプラスチックにはどんな種類がありますか?

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近年、プラスチックごみの環境問題が大きく取り上げられ、企業や個人を問わず「リサイクル可能なプラスチックとは何か」を正しく理解することが求められるようになりました。私はプラスチック成形金型の現場で30年以上働いてきた職人として、現場で扱ってきた経験をもとに、リサイクル可能なプラスチックの種類と特徴についてわかりやすく解説していきます。


リサイクル可能なプラスチックとは?

プラスチックは大きく「熱可塑性プラスチック」と「熱硬化性プラスチック」に分類されます。このうちリサイクル可能なのは熱可塑性プラスチックです。加熱すると柔らかくなり、冷やすと固まる性質を利用して、何度も再成形が可能です。


主なリサイクル可能なプラスチックの種類と特徴

以下に、代表的なリサイクル可能なプラスチックを紹介します。それぞれの樹脂には特性があり、使用用途も幅広く、リサイクルのしやすさも異なります。

1. ポリエチレンテレフタレート(PET)

  • 特徴:透明性が高く、強度がある。耐薬品性に優れる。
  • 用途:飲料ボトル、食品容器、繊維(フリースなど)
  • リサイクル性:非常に高く、リサイクルPET(再生PET)は新たなボトルや衣料に活用。

2. ポリエチレン(PE)

  • 特徴:柔軟性があり、耐薬品性・耐水性に優れている。
  • 用途:ビニール袋、食品ラップ、洗剤容器
  • リサイクル性:比較的容易。HDPE(高密度ポリエチレン)とLDPE(低密度)に分類される。

3. ポリプロピレン(PP)

  • 特徴:耐熱性があり、軽量で強度も高い。
  • 用途:弁当箱、自動車部品、医療器具、キャップ類
  • リサイクル性:熱可塑性のためリサイクルしやすいが、用途が限られることもある。

4. ポリスチレン(PS)

  • 特徴:透明性と加工性に優れる。発泡させて使用することも多い。
  • 用途:食品容器、発泡スチロール、CDケース
  • リサイクル性:再生材はあるが、収集・選別にコストがかかる。

5. ポリ塩化ビニル(PVC)

  • 特徴:耐水・耐薬品性に優れ、安価。
  • 用途:パイプ、雨樋、床材、窓枠
  • リサイクル性:リサイクル可能だが、有害ガスの発生リスクがあり注意が必要。

リサイクルの方法と流れ

リサイクルには主に以下の方法があります。

1. マテリアルリサイクル

廃プラスチックを粉砕してペレット化し、新しい製品の材料として再利用する方法。比較的多く使われている方法で、特にPE・PP・PETに適しています。

2. ケミカルリサイクル

プラスチックを化学的に分解し、原料に戻す方法。コストは高めですが、汚れたプラスチックでも再利用可能。

3. サーマルリサイクル

可燃ごみとして焼却し、発電や熱源として利用する方法。厳密にはリサイクルではないが、エネルギーの有効活用とされます。


プラスチック成形現場でのリサイクルの工夫

現場では以下のような工夫をしながら、リサイクルを意識した成形を行っています。

  • ゲートランナー材の再利用:取り除かれた材料を再度成形用材料として使用。
  • ミックス防止:素材ごとに分けて成形し、異種混入を防止。
  • 在庫ロスの削減:必要な分だけを成形することで廃棄を抑える。

今後の課題と展望

今後はバイオプラスチックや、生分解性プラスチックといった新素材の台頭も進み、リサイクルの定義もより複雑になっていきます。現場でも、これまで以上に素材の選定や成形設計の段階で「循環」を意識した開発が求められる時代です。

また、企業としても「リサイクル可能な素材を使っている」というのは、環境配慮型のブランディングにもつながります。エンドユーザーからの評価や取引先の信頼にも関わるため、SDGsの観点からも今後ますます注目されていくでしょう。


まとめ

リサイクル可能なプラスチックには、PET、PE、PP、PS、PVCなど多くの種類があります。それぞれに特性があり、現場でも用途に応じて選択され、再資源化の取り組みが進められています。

プラスチックを「使い捨て」から「循環型資源」へと変えていくには、製造・流通・消費のすべての段階で知識と工夫が必要です。私たちものづくりに携わる者として、今後もより良い未来のために、プラスチックの適正利用とリサイクルに貢献していきたいと思います。

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