金型を変更する際の費用はどのくらいかかりますか?

メンテナンス・劣化対策

プラスチック成形において、製品の仕様変更や生産効率の向上を目的として金型を変更するケースは珍しくありません。しかし、金型の変更には多額の費用が発生するため、事前にコストの概算を把握し、適切な予算計画を立てることが重要です。本記事では、金型変更の費用の内訳や影響する要因について詳しく解説します。


1. 金型変更にかかる主な費用項目

金型を変更する際の費用は、以下のような要素で構成されます。

1-1. 新規金型製作費

新しい金型を作る場合、最も大きなコスト要因となるのが金型製作費です。金型のサイズ、構造、使用する材料、加工精度などによって費用は大きく変動します。

費用相場:

  • 小型・簡易な金型: 50万円〜300万円
  • 中型・一般的な金型: 300万円〜1,000万円
  • 大型・精密金型: 1,000万円以上

1-2. 既存金型の改造費

金型を新しく作るのではなく、既存の金型を修正・改造する場合の費用です。変更内容によっては、完全な新規製作よりもコストを抑えることができます。

費用相場:

  • 小規模な修正(刻印変更など): 10万円〜50万円
  • 部分的な改造(ゲート位置変更、冷却ライン追加など): 50万円〜200万円
  • 大規模な改造(キャビティの追加・削減、コア変更など): 200万円〜500万円

1-3. 設計・開発費

金型の変更には、設計の見直しや開発プロセスが必要です。3D CAD設計、シミュレーション、試作などの費用が発生します。

費用相場:

  • 設計費用: 50万円〜300万円
  • CAE解析(流動解析など): 10万円〜100万円
  • 試作費(試作金型や3Dプリント): 20万円〜200万円

1-4. トライアル(試作)費用

新しい金型や改造した金型が正しく機能するかどうかを確認するために、試作を行います。成形機の使用時間や材料費、オペレーターの人件費が含まれます。

費用相場:

  • 1回のトライアル: 10万円〜50万円
  • 複数回の修正を伴う場合: 100万円以上

1-5. 生産ライン調整費

新しい金型を導入すると、成形条件の最適化や生産ラインの調整が必要になります。成形機の設定変更、オペレーターの教育、品質検査の強化などのコストが発生します。

費用相場:

  • 軽微な調整: 10万円〜50万円
  • 大幅な工程変更を伴う場合: 50万円〜200万円

1-6. 廃棄・保管費用

不要になった金型の処分や、一時的に保管する場合のコストも考慮する必要があります。

費用相場:

  • 金型廃棄処分: 5万円〜50万円
  • 金型保管(年間): 10万円〜50万円

2. 金型変更費用に影響する要因

2-1. 製品の形状と複雑さ

複雑な形状の製品ほど金型製作に手間がかかり、加工費用が高額になります。特に、アンダーカットや精密加工が必要な場合はコストが上昇します。

2-2. 金型の材質

金型には鋼材やアルミ合金が使用されます。一般的に、耐久性の高い鋼材(金型用H13など)は高価ですが、長寿命です。試作用や短期間の生産にはアルミ金型を用いることでコストを抑えられます。

2-3. キャビティ数

一度に成形できる製品数(キャビティ数)が増えるほど、金型の設計や加工が複雑になり、コストが上昇します。ただし、量産時のコスト削減効果も大きくなるため、長期的な視点での検討が必要です。

2-4. 追加機能(ホットランナー、ガス抜き機構など)

ホットランナーシステムやエアベントの最適化を行うと、成形品質は向上しますが、金型費用は増加します。投資対効果を考慮して選定することが重要です。

2-5. 海外製金型と国内製金型の違い

海外(中国や東南アジア)で金型を製作すると、コストを30〜50%削減できるケースもあります。ただし、納期や品質管理のリスクもあるため、慎重に検討する必要があります。


3. 金型変更費用を抑えるためのポイント

3-1. 事前の綿密な設計

初期設計の段階で金型の最適化を行い、後から修正が発生しないようにすることで、余計なコストを削減できます。

3-2. 既存金型の活用

可能であれば、新規製作ではなく、既存の金型を改造することでコストを抑えることができます。

3-3. 試作を活用

3Dプリントや簡易金型を活用し、事前に製品形状や成形条件を確認することで、大きな手戻りを防ぎます。

3-4. 長期的なコストを考慮

初期費用が安くても、耐久性が低い金型を選ぶと、長期的にはコストが増加する可能性があります。生産数や使用期間を考慮して、最適な金型を選択することが重要です。


まとめ

金型の変更費用は、新規製作か改造か、製品の複雑さ、材質、キャビティ数などによって大きく変動します。一般的には数十万円から数千万円の範囲となりますが、適切な設計と計画を立てることでコストを最適化することが可能です。長期的な視点で投資対効果を考えながら、金型の選定・変更を進めることが重要です。

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