成形機の種類によって月間生産数は変わる?

成型基礎知識

〜最適な機種選定が生産性を左右する〜

はじめに

プラスチック成形業界では、月間生産数は製造効率を測る上での重要な指標です。多くの企業が「生産量を上げたい」「納期を短縮したい」といった課題を抱える中で、成形機の選定は生産性の鍵を握る要素となります。特に新規で取引先を探している企業にとっては、成形工場が使用している機械の種類が、生産体制の柔軟性や納期対応力を判断する大きな材料となるでしょう。

本コラムでは、射出成形機・圧縮成形機・ブロー成形機などの代表的な成形機種ごとに月間生産数にどのような違いが出るのか、また製品の種類に合わせた成形機選定の重要性について解説します。


成形機の主な種類と特徴

1. 射出成形機(インジェクション)

最も汎用性が高く、自動化・多型取りがしやすいため大量生産向き。1サイクルあたり数秒〜数十秒で製品を作成可能であり、月間数十万〜100万個以上の生産も現実的です。

  • 適応製品例:食品容器、家電パーツ、日用品
  • 強み:高速・高精度・金型交換が容易
  • 弱み:初期金型費が高め

2. ブロー成形機

中空製品(ボトル等)の製造に用いられる。1ショットで複数個成形可能な機種もあり、月産10〜50万本程度が目安となります。

  • 適応製品例:飲料ボトル、洗剤容器
  • 強み:中空体の一体成形が可能
  • 弱み:複雑形状への対応が難しい

3. 圧縮成形機(コンプレッション)

樹脂を金型内で加熱圧縮する方式。サイクルタイムが長く、月産は1万〜10万個程度が一般的です。

  • 適応製品例:電気部品、自動車部品(熱硬化性樹脂)
  • 強み:肉厚・高強度部品に対応可能
  • 弱み:自動化に難あり、金型費も高め

4. 真空成形・熱成形

薄いシート状のプラスチックを加熱し、型に吸引・圧着して成形。大量生産に強く、月産100万枚超も可能

  • 適応製品例:食品トレー、パッケージ
  • 強み:ランニングコストが安い
  • 弱み:形状制限が大きい、厚み精度が出しづらい

成形機の選定が生産数に与える影響

成形機の性能(最大型締力・金型サイズ・サイクルタイム・自動化対応力など)は、直接的に生産量へ影響します。

例えば同じ100gの製品を作るにしても、

  • A社(古い成形機、単型取り):月間5万個
  • B社(新型高速成形機、4型取り):月間20万個

といったように、4倍以上の差が出ることも珍しくありません。

【ポイント】

  • 高速射出対応機は1サイクル3秒未満も可能。→高速大量生産
  • 多型取り+自動取り出しロボットで稼働率を向上
  • 定期メンテナンスの有無でも稼働ロスの差が出る

製品と成形機のマッチングが生産性を最大化

製品の性質により「適切な成形機」は異なる

製品カテゴリ推奨成形機生産数目安(月間)
薄肉パーツ(日用品など)射出成形機(高速型)50〜100万個
中空ボトルブロー成形機10〜50万個
精密部品(小ロット)射出成形機(小型)1〜5万個
肉厚構造体(耐熱部品)圧縮成形機1〜10万個

成形機だけではない、生産数に影響する要素

もちろん、成形機の種類だけが月間生産数を決定するわけではありません。以下の要因も大きく影響します。

  • 金型のキャビティ数(同時にいくつ作れるか)
  • 作業人員のスキル
  • 成形機の稼働時間(1日何時間稼働するか)
  • 材料供給や冷却システムの効率性

これらを総合的に整備することで、同じ成形機でも2倍以上の生産差が出る場合もあります。


まとめ:成形機選びは”投資効率”で考えるべき

新規取引先を選定する企業が、どのような成形機をどのように運用しているかを知ることは非常に重要です。単に「価格が安い」ではなく、「必要数を確実に・安定的に供給できるか?」という観点から評価するべきでしょう。

生産性を最大限に高めるには、製品に合った成形機選定+生産工程の最適化が必須です。月間生産数は成形機の性能だけでなく、企業の総合的な生産体制に左右されるということを意識することで、より良い成形パートナー選びが可能になります。

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