生産数は製品の種類によって変わるのか?

成型基礎知識

~プラスチック成形における品種別生産性の真実~

プラスチック成形加工業界では、製品の種類が生産数や工場稼働率、コストにどのような影響を与えるのかが、サプライチェーンの最適化や新規発注の戦略において非常に重要です。今回は「生産数は製品の種類によって変わるのか?」という視点から、実務に即したコラムをお届けします。


1. 結論:製品の種類によって生産数は大きく変わる

これは明確な「YES」です。たとえば、小型の汎用部品と、大型で精密さを要する工業用ケース部品では、1日の生産可能数も成形サイクルもまったく異なります。製品の物理的サイズ、材質、金型構造、後工程の有無などが生産性を大きく左右します。


2. 成形品の種類による生産性の違い

小型・単純形状の製品(例:キャップ、パッキン等)

  • サイクルタイム:10〜20秒前後
  • 1時間あたりの成形数:1キャビティあたり180〜360個
  • 特徴:多キャビティ金型を使用することで、数千個単位の量産が可能。樹脂流動も良好。

中型・日用品(例:タッパー容器、家庭用部品)

  • サイクルタイム:20〜60秒程度
  • 1時間あたりの成形数:1キャビティあたり60〜180個
  • 特徴:外観・透明性・密閉性などの要求もあり、材料や金型冷却の最適化が必要。

大型・産業部品(例:バッテリーボックス、自動車部品)

  • サイクルタイム:60〜300秒
  • 1時間あたりの成形数:1キャビティあたり12〜60個
  • 特徴:金型が高価で冷却に時間を要することが多い。射出圧力・樹脂温度制御も重要。

3. 多品種小ロットと少品種大量生産の違い

製品の種類が増えると、金型交換や条件設定の頻度が高まり、段取り時間が生産数のネックになります。逆に、ひとつの製品を長時間稼働できる体制(いわゆる少品種大量生産)が整えば、月産10万個以上も可能です。

多品種対応工場の特徴

  • 自動金型交換機や成形条件のデータ管理システムを導入
  • 品種ごとに適した材料保管、射出成形機を管理
  • 生産計画の精密な立案と対応力が要求される

4. 材質による違いにも要注意

たとえば、POM(ポリアセタール)やPA(ナイロン)のように結晶性樹脂は冷却に時間がかかり、サイクルタイムが長めになります。逆に、ABSやPPなどの非結晶性樹脂は短サイクルで成形できる傾向があります。

また、難燃グレード高剛性タイプなど特殊な樹脂は成形性が劣るため、サイクル調整や歩留まり改善の工夫が必要となります。


5. 月間生産数の見積り方法

実際の工場では以下のような算出式で概算します。

月間生産数 =(1時間の成形数)×(1日の稼働時間)×(月間稼働日数)×(金型キャビ数)

例:1キャビ、60秒サイクル品、月20日稼働
→ 1時間:60個、8時間:480個、月間:9,600個


6. 実際の工場現場の声

「同じ設備でも、製品が変わると5倍くらい生産数が違うこともある」
「大きくて薄肉な製品は冷却が長く、意外と時間を食う」
「精密品だと、樹脂乾燥や管理工数のほうがコストに効いてくる」

こうした声からも、製品種類と生産効率は密接な関係があることがうかがえます。


7. まとめ:製品種類の違いを理解することが取引成功の鍵

成形品の生産数は、その形状・大きさ・材質・金型構造・品質要求によって大きく変動します。見積もり依頼や新規発注を行う際には、希望数量だけでなく「どんな製品なのか」を詳細に伝えることが、正確な納期・価格の提示やトラブル防止につながります。

今後、新たなサプライヤー開拓やコスト改善を検討されている企業様は、ぜひこの「品種別の生産性」という視点を意識してみてください。

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