生産数を増やすと品質に影響する?プラスチック成形現場で知っておきたい注意点と対策

メンテナンス・劣化対策

近年、プラスチック成形業界において「生産数の増加」と「製品品質の維持・向上」は、相反する課題として多くの成形工場が直面しています。取引先からの大量発注や納期短縮の要求に応じるため、月間生産数の引き上げは不可避な流れですが、それに伴う「品質への影響」は決して無視できません。

本コラムでは、「生産数の増加が品質に与える影響」と「その対策方法」について、金型・射出成形に精通した現場目線から解説し、取引先との円滑な関係維持にもつながる知識をお届けします。


生産数が増えると起きやすい5つの品質トラブル

プラスチック成形において、以下のような品質トラブルが生産数の増加時に起きやすくなります。

1. 金型の温度管理が追いつかずヒケ・バリが発生

高サイクル生産では冷却工程が不十分になりがちです。これにより収縮ムラが生じ、ヒケやバリなどの不良発生率が上昇します。

2. 成形条件の変化による寸法ズレ

生産スピードを上げると、射出速度や保圧時間のばらつきが生じ、寸法精度のブレが大きくなる傾向があります。

3. 材料供給の不均一化によるウェルドラインや焼け

連続運転で材料乾燥や混練が不安定になり、異常部位が発生。特に耐熱樹脂では焼けが顕著です。

4. オペレーターの負荷増大による検査ミス

生産数が多くなると、品質検査に割ける時間が限られ、微細な不良の見落としが増えます。

5. 金型や設備の劣化促進

連続生産は金型やスクリューの摩耗を早め、長期的に見て不良品率が高まるリスクをはらみます。


品質を落とさずに生産数を増やす7つの対策

1. 自動化による成形条件の安定化

高精度な射出成形機と金型温調機を導入することで、温度や圧力のばらつきを防ぎます。AI制御付きの成形装置を使用する企業も増えています。

2. 金型メンテナンスの頻度を増やす

生産数増加時は金型の清掃・部品交換サイクルを通常より早めるのが重要です。摩耗劣化の見逃しが品質低下につながります。

3. 複数金型のローテーション使用

同一部品の大量生産には、同一形状の金型を複数保有し、交代で使用することで疲労を回避し、金型寿命も延ばせます。

4. 材料の自動供給・乾燥装置導入

連続成形時に品質を安定させるには、ペレットの自動乾燥・供給装置の使用が不可欠です。湿気や混合不良の防止につながります。

5. 品質検査の自動化

目視検査の限界を補うため、カメラ画像認識による外観検査や寸法測定装置を導入し、不良の早期発見を実現しましょう。

6. 成形条件データの一元管理とフィードバック

射出条件をクラウドで一元管理し、異常検知→即時対応が可能な体制を構築すると、量産時の品質ブレを最小限に抑えられます。

7. 工程別の担当者分担と人員増強

スピードを求めるほどヒューマンエラーも増えます。検査・梱包・成形の分業体制を明確にし、繁忙期には補助人員の投入も重要です。


発注者・受注者の「品質」への意識共有がカギ

実は、品質低下が起こる最大の要因は、「生産量と品質のバランス」に対する両者の認識のズレです。

発注者側はコストと納期を最優先しがちですが、受注者側としては長期的な品質担保のために一定のキャパシティとメンテナンス時間を必要とします。
このギャップを埋めるためには、「納期優先で品質を犠牲にしない」「品質の限界点を明確に共有する」といったコミュニケーションが欠かせません。


まとめ:高品質・高生産を両立する成形パートナーを選ぶ時代へ

生産数を増やすこと自体は技術的にも設備的にも可能です。ただし、それを 「品質を落とさずに実現できるパートナーかどうか」 が、今後のプラスチック製品の差別化において極めて重要です。

弊社では、最新の成形技術・金型設計ノウハウ・設備管理体制を用いて、お客様ごとの生産要件に合わせた最適な提案を行っております。高精度・高品質・高生産のバランスを重視したパートナーをお探しの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

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